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「ドイツ薬学視察旅行」レポート

「ドイツ薬学視察旅行」レポート

ゆうせい薬局 小西 明

 

ドイツハイデルベルクに入ると、A のマークがバスの車窓から街の中で、ひときわ存在感を示しています。それは薬局の統一マークでした。

 

2011年5 月7 日から6 日間、ドイツ薬学視察旅行に参加しました。参加者は、11 名のこじんまりした視察団です。ドイツは医薬分業発祥の地として、我々の知るところであり、また明治政府はドイツ医学を採用し、日本薬局法も手本にしています。ドイツの医薬分業は、750 年の歴史があります。ドイツの薬局は、よちよち歩きの日本の薬局薬剤師にとって、原点を見つめなおし、また未来を示唆する視察の研究の対象であります。

 

ハイデルベルクの古城の中に、ドイツ薬事博物館はあります。

『哲学の道』から見たハイデルベルク城

『ドイツ薬事博物館』はハイデルベルク城内にあります

 

今回の通訳ガイドの中村典子さんは、ここの学術員でもあります。ここでは、古代からの薬事史や薬局や薬物の展示がされています。ここの1 室で、ドイツの薬局の現状を現地の薬剤師からレクチャーを受けました。

 

翌日の見学先アトス薬局などを参考に進めます。

 

ドイツの<薬局に関する法律1 条1 項>には、

『薬局は公共の利益において、国民のために秩序正しく医薬品の供給することを義務付けられるものとする』とされています。

 

また<薬剤師法1 条>には、

『薬剤師は住民に秩序正しく医薬品を供給することを職業として、それによって個人及び国民に健康を提供し奉仕するものである。薬剤師の医薬品に関する責任は、まず医薬品を安定供給することにあり、その供給について特に留意されるべきは、販売する医薬品の品質にある』とされています。

 

見学したアトス薬局は、ハイデルベルクの中心駅に近くビルの1 階に入口があります。薬剤師2 名PTA(薬学技術アシスタント)3 名PKA(薬学商業従業員)です。

 

処方箋1 日100 枚来店客数200 人、取り扱い品目10000 アイテムで、調剤売上が、70%です。

 

ドイツの薬局は、チェーン店がなく(一人4 店まで)基本的に独立店です。ほぼ100%の医薬分業で、病院の入院調剤も院外です。

 

取り扱い品目は、

1.要処方箋薬日本における医療用医薬品

2.薬局指示薬処方箋なしに入手可能薬局専売品

3.その他化粧品、ハーブなど、薬局以外販売可能品

が、あります。

 

ドイツでは、薬局統一マークがあり、存在感があります。

 

A は、Apotheke のA とギリシャ神話に出てくる健康の女神ヒデルギアが、蛇に餌を与える時の杯と蛇をアレンジしたものです。

薬局のファサードドイツ統一薬局マークApotheke のA が、掲げられています。

 

店舗については、見学したアトス薬局をみますと、公道に面しガラス面で、ウインドディスプレイされていて、ブランドショップのショーウィンドを見ているようです。

 

入口の近くには、夜間の受取窓口があります。これは薬剤師会で、輪番制をとっていて、宿直して業務にあたります。ふつう2~3 週間に一度まわってきます。ドイツには閉店法があり、午後8 時半には小売店は閉まります。コンビニはありません。

 

そのため、地域での輪番制の薬局のみが、唯一対応可能となり、処方薬のみならずトイレタリーも含め、信頼感を強くしているのです。店舗に入りますと、処方箋受付スペース、ハーブ化粧品などを販売する販売スペース、レジスペースとあり、そこでお客さんと応対します。

 

その後ろに薬局指示薬が、置かれています。その奥に天井まで届く医薬品棚が並んでいます。

 

そこには、箱入りの医療用医薬品が入っています。

店内カウンターがあり、その後ろに薬局指示薬が陳列されている。また、その奥に薬品棚があり、要処方箋薬が入っている。

 

次に調剤室、とくに軟膏の練合はよく処方され、スチック型の容器に充填され、作られていました。品質を検査する試験室、夜勤室、保管室など、110 平方メートル以上と、ドイツの薬局は、フルラインで大きく、見た目もグーです。日本では、調剤のみの機能で、小薬局の多いことをかんがえると、違いを感じます。

 

調剤は、箱入りで渡します。ほとんどが、バラ錠です。

 

処方箋の薬品は、3 品目まで、それ以上は、また3 品目で、2 枚3 枚となります。処方箋を受け取ると、レセコン入力、ピッキング、チェック、お薬を渡します。

 

患者は、添付文書を読む義務があります。患者は、診察時にアレルギー、併用薬、状態を伝え、医師は、副作用、相互作用などを説明します。

薬剤師は、患者に医師からの服薬指示が、あったかを確認し、なければ必要事項を説明します。この辺りが、医薬分業の原点かなと、思いました。

医薬品棚医療用医薬品が、箱入りで入っている。高くて、長い。

 

ドイツでは、ほとんどの国民が法定保険に加入しています。保険料は、収入によってかわりますが、無職の配偶者、18 歳未満は、無料です。

また、被保険者の薬局での自己負担は、医薬品1 品につき10%負担最低5ユーロ、最高10 ユーロになります。レセプトは、月4 回、集計センターに処方箋を送り、請求分が、振り込まれます。どちらも、非常に単純、間違いにくいシステムです。

 

 

ドイツ人薬局開設者と記念撮影

 

ドイツの薬局は、調剤、医薬品販売などを通じて、地域住民から信頼され、薬剤師職能も活かされ、人々の日々の生活になくてはならない存在です。しかし、薬剤師から、聞こえてくるのは、国の財政赤字による健康保険制度改革によるOTC 類似薬の自己負担化、参照価格導入政策などでジェネリック薬品が、75%に達し、経営が、急激に悪化していす。

 

また、世間からは、まだ優遇されていると薬剤師バッシングも起こっていて、薬局不要論まで、出てきていると聞きます。歴史と実績のあるドイツでも厳しい現実が、あります。

 

国の財政難から来る医療費削減政策は、近々日本でも、厳しい形で、やってきます。

 

この研修で、薬局薬剤師が、日本でこれからも職能を発揮するためには、薬の専門家として国民に信頼され、存在感を作っていかなければ、と強く感じました。